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キベベワールド

「メガネの一心堂」の店長が、タメになること・ならないことをつづります

合っていない?

今使っているフレームに飽きてきたので、新しくメガネを作りたい。
今のメガネは見えにくくなってきているので、せっかくだから度数も測ってほしい。

といった主訴で検査をしたとします。

現在使用眼鏡が

右 S-2.00
左 S-2.00

そのメガネでの矯正視力が

右 0.15
左 0.6

だったとします。


5mでの完全矯正度数は下記の通りでした。

S-3.50 C-1.00 AX180
S-2 75

矯正視力は左右とも1.2になりました。


眼位については今回は考えないものとして、どういう度数で調製すればいいのでしょうか?
私見としては、答えは一つではないと思います。
確実に言えることは、装用テストが非常に大事ということです。


試しに完全矯正値を掛けてもらうと、「よく見えるけれど、足元が怖い気がする」と言われたので、アレンジをすることにします。

パターン①
短絡的に右眼の乱視を抜いて、その分近視を増やして(球面調整と言います)バランスを取りました。
念のため、近視を左右とも一段弱くしてみました。

右 S-3.75
左 S-2.50

両眼開放下での矯正視力は1.0でした。
しばらく装用テストをした結果、これなら掛けられるということで、この度数で調製・納品しました。

2日後電話がかかってきました。
「掛けていると頭が痛くなる。度が合っていないのではないか?」
とのお申し出です。


パターン②

度数を変える際は、前のメガネの度数との変化を±050(二段階)以内にしておくのが無難、多くても±075(三段階)以内に抑えるべき、といった考え方があったりします。

それを忠実に守るため、

右 S-2.50
左 S-2.50

としてみました。
両眼開放下での矯正視力は1.0です。
右眼の矯正視力は0.3にしかなりませんが、左眼で見えているので問題ないとのことで、調製・納品しました。

2日後、電話がかかってきました。
「掛けていると気持ちが悪い。左眼は良く見えるのに右眼が全然見えない。度数が合っていないのではないか?」
というお申し出です。



どちらも極端な例ですが、何が言いたいかというと、このように、前眼鏡との度数差および矯正視力の左右差が大きい場合、装用テストと説明をよほどうまくやらないと、どんな度数でやっても不満が出るリスクが高いということです。
しかも「度が合っていない」という評価をされかねないということです。

上記のパターン①に関しては、理論的には「度が合っていない」とは言えないと思います。
「度が合っていない」というよりも「慣れることができない」というのが適切だと思いますが、掛けられなければ「合っていない」と言われてしまうのは仕方ないところかもしれません。

むしろパターン②のほうが、左右のバランスという観点から「度が合っていない」とはいえるかと思いますが、旧眼鏡が左右同度数だということを踏まえ、且つ変化の幅を少なく抑えたという点では、無下に非難されるものでもないかもしれません。

パターン①でうまくいく人も、パターン②てうまくいく人もいると思います。
もちろん、他のパターンでうまくいく人もいます。

今のフレームに飽きてきたというのがメインの主訴だということを踏まえて「今のメガネと度を変えてしまうと、洋服に合わせて掛け替えたりするのがしにくくなりますよ」とかなんとかうまいこと言って、前の度数と同じで納品するというのも、アリだと思います。

10人の眼鏡士がいたら、10人とも違う度数を候補にするかもしれない、そんなシチュエーションです。

どんなパターンでやっても、装用テストで納得いただしいて決めたとしても、結果として掛けられなければ「度が合っていない」と切り捨てられてしまうし、セオリーから外れていても、掛けられれば「度が合っている」と評価されるという、難しい例でもあります。






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  1. 2019/01/11(金) 23:55:56|
  2. 視機能・視覚・検査など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:7

コメント

とても興味深く拝読しました。

私も消費者として同じ経験をしたことがあります。もうひとつ、「度が合っていない」と消費者が感じる場合、フレームの大きさに原因を求める可能性はあり得ますか?

たとえばサイズの小さいものをかけ慣れていて、新しいフレームに縦と横幅のそれまでより大きくしたことで違和感を訴えるケースと言うのはあるのでしょうか?

当方は46のサイズを使いなれていて、新しいフレームに大きめを選択したところ、同じレンズにもかかわらず「近くが見え過ぎる」感覚を覚え、選択の難しさを痛感しています。
  1. 2019/02/13(水) 14:36:45 |
  2. URL |
  3. ももー #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

こんばんは。

> たとえばサイズの小さいものをかけ慣れていて、新しいフレームに縦と横幅のそれまでより大きくしたことで違和感を訴えるケースと言うのはあるのでしょうか?
> 当方は46のサイズを使いなれていて、新しいフレームに大きめを選択したところ、同じレンズにもかかわらず「近くが>見え過ぎる」感覚を覚え、選択の難しさを痛感しています。

同じ度数・同じレンズであっても、レンズの大きさが変われば、主に周辺部を通してみたときの見えかたは変わってきます。
レンズの設計が球面か非球面か、レンズの度数がどれくらいかによって、変化の仕方は変わります。
それを感じる・感じないは個人差がありますが。

レンズの大きさ以外にも、上から見たときに左右のレンズがほぼ直線か、スポーツサングラスのように顔に添うような感じになっているかでも変わりますし、レンズを横から見たときの視線が通る時の角度(視線に対して直角にレンズがあるのか、傾いているのか)によっても変わります。

いろいろな要素が絡み合っているので、同じ度数・同じ設計のレンズであっても、見えかたには違いがでることがあるわけです。


  1. 2019/02/13(水) 21:57:24 |
  2. URL |
  3. キベベ #-
  4. [ 編集 ]

返答ありがとうございます。とても勉強になりました。

メガネ屋さんとしては消費者が「度数が合わない」と訴える場合、その対処の選択肢の一つとして返品というのはありうるのでしょうか?製品の性格がらあまり聞いたことはありませんが、例えば構造上フレームが合わなければ、目を矯正して視力を発揮させるという本来の機能を発揮せず販売していることにもなり、難しい所だと感じました。

また、上記エントリー内容を拝読して思ったのですが、「客の度数と選ぶレンズの屈折率」には一定の相関関係があるという事でしょうか?

例えば
・Aさんは-6.0で乱視なし、ならば片面非球面1.67でいい
一方で
・Bさんは-4.0で乱視あり、しかもパソコンを業務上よく見る、それなら両面非球面で1.74がいい

などと言う理屈が起きるのかな?と読んでいて疑問になりました。消費者サイドの素人なりの疑問でした。
  1. 2019/02/15(金) 08:58:46 |
  2. URL |
  3. ももー #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

「度数が合わない」という場合の返品について

まず大前提として、根本的に測定した度数が間違っているというような場合は除きますよ。
「度数としては決して間違ってはいないけれど慣れられず、合っていないという表現になった」場合とご理解ください。

基本的に度数を決めるにあたっては、店とユーザーとの相互確認があるはずです。
つまり、ユーザーが「これでいい」という承諾がなければ、商談は成立しないのが通常です。

裾上げしたり、サイズ直しを済ませた服を返品したいと申し出ても速やかはにいかないケースが多いのではと思います。
メガネの場合も、これに近いのではと考えます。
つまり、ユーザーの意向に添って一度製品に手を加えてしまっているため、返品したものを改めて売るということが難しく、それはそっくりそのまま店の損失となります。
また、検査・加工・フィッティング等に費やした時間や技術料も無駄になります。

「度数が合わない」という申し出に対しては、返品=返金ではなく、できる限り度数やレンズを変えてみたりすることで解決を図る店が多いと思います。
場合によってはフレームを変えて、一式作り直すこともあります。
無論、新しく交換すればコストはかかりますが、レンズによってはメーカーが補償してくれる場合もありますし、とにかくユーザーの信頼を損なわないように何とかしようと尽力するのが普通かと。
一旦得た売り上げは手放したくないという事情もあるかとは思いますが。

そうはいっても、何をやっても解決できないというような場合があったとしたら、最終的には返金に応じる場合もあるかと思います。
とても後ろ向きに思われるでしょうが、冒頭に示した通り「この度数でいいと納得」されているわけですから、店の立場からすれば、釈然としないものはあるわけです。

一方で、そういった不具合に関しては、即返金というスタンスの店もあると思います。
言いかたは悪いですが「面倒なことはしないで、さっさとお金を返して、別の人にメガネを売ったほうが効率がよい」という考え方です。
一理あるとは思いますが、無責任のような感じはします。
ユーザーからすれば、お金返してもらえるのならOKなのかもしれませんが。

誤解を生む表現・説明不十分な点もありますので、これで返信するのもどうかと思ったのですが、何となくでも言いたいことが伝わればよしとさせてください。



> 「客の度数と選ぶレンズの屈折率」には一定の相関関係があるという事でしょうか?

屈折率というのはレンズの厚みを左右する要素ですから、度数が強くて厚みが出るのをユーザーが良しとしないのであれば、高屈折をお勧めすることになります。

度数が強くてもフレームの選び方によっては厚みを押さえることはできますから、「この度数だったらこの屈折率」と杓子定規に決められるものではありません。
「この度数をこのフレームに入れたら、これくらいの厚みになりますよ」という具体的な説明のもとに、ユーザーと相談をしながら屈折率を選択するのが通常のスタンスです。

外面非球面と両面非球面の選択については、装用テストでの比較ができないため難しいです。
私はセールストークだけで売るのは苦手なので。
光学的には両面非球面のほうが優れているとは言えるでしょうが、違いが分かるかどうかは個人差があります。
「この目で比較ができないものを、一般に優れていると言われているからという理由で貴方は選びますか?」ということです。
そこはユーザーのご判断だと思います。

  1. 2019/02/15(金) 22:45:00 |
  2. URL |
  3. キベベ #-
  4. [ 編集 ]

Re: Re: タイトルなし

追記します。

今回のももーさんのように、違和感の原因がフレームサイズにあると考えられるような場合、前述のようにフレームを交換するという選択肢はあり得ます。

大きいサイズから小さいサイズに変更するのなら、レンズは転用できる可能性がありますので、店としてはフレームの損失のみで済みます。

ただ、フレームの金額が異なる場合は厄介です。
交換したフレームのほうがかなり高くなるのなら、ももーさんが差額をご請求されることはあり得ます。
交換したフレームのほうが安くなる場合、その理屈で言えば差額はご返金になりますが、お店によって対応は変わると思います。

フレーム交換の理由が、「似合わない」といった本人の好みに由来するものであれば、お店としてはユーザーさんの都合で損失を被ったと考えられなくもないですから、返金は応じたくないという気持ちになるのはわかります。

今回のケースのような場合は、本人の好みとは違いますから、お店の判断でしょうね。
ユーザーさん目線なら差額の返金が当然ということになるでしょうが、私はどちらの気持ちもわかりますので・・・




  1. 2019/02/16(土) 12:41:57 |
  2. URL |
  3. キベベ #-
  4. [ 編集 ]

ご丁寧に解説頂きありがとうございます。ご趣旨とてもよくわかりました。ユーザーと売る側でこれだけ見ている景色が違う買い物も珍しいですね。

お伺いした理由はメガネ店である種の嫌な思いをしたことあったからです。見え方の違和感を伝えると、そのお店は私がフィッティングをいじったような質問をされ、さも私に全面的に非があるかのような物言いだったのです。

そのお店では結局何度かフィッティングなどをして治らず、返金対応となりました。検眼やレンズを再装備することはありませんでした。格安店ならいざ知らず、デパートに入店するブランド販売する店で起きたことです。

とても勉強になりました。ありがとうございます。

  1. 2019/02/17(日) 07:37:28 |
  2. URL |
  3. ももー #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

それは残念な対応でしたね。
お気持ちお察しします。

メガネづくりは、店とユーザーさんとの相互信頼関係に基づく共同作業です。
言葉足らずで誤解を生んでしまっているところもあるかと思いますが、良いお店と出会えますように。
  1. 2019/02/17(日) 11:28:21 |
  2. URL |
  3. キベベ #-
  4. [ 編集 ]

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