屈折異常度数の単位「D」と遠点距離(m)は逆数の関係にある、ということを記しました。
近視の場合、遠点は眼前の有限距離ですから、-10Dの近視であれば、
遠点距離(m)=1/10=0.1
つまり、眼前10センチになります。
では、遠視眼の遠点はというと、眼後に位置します。
この眼後の解釈が、混乱を生むわけでありまして。
当店ホームページの遠視の説明では、『現代の眼科学』による遠視の定義「平行光線が無調節状態の眼に入ったとき、網膜より後方に結像する屈折状態」を引用して、このような図を掲載しています。

そして、この網膜後方に結像しているものを、網膜上に持ってくるために「調節」をして見ているのが遠視の特徴だと述べています。

遠視の度数が強ければ強いほど、「調節」をする力が強くなります。(A)
ここからです。
S+0.25Dの遠視眼の遠点と、S+10Dの遠視眼の遠点を計算してみましょう。
前者は眼後4m(1/0.25)、後者は眼後10センチ(1/10)になります。
そうすると、
「S+0.25Dの遠点のほうが眼から遠いのだから、網膜上に持ってくるためにはS+10Dよりも「調節」を働かさないといけないのではないか。上記の(A)と矛盾するのではないか」
という疑問が生じてきてもおかしくないでしょう。
ここで凸レンズや凹レンズ、虚像とか実像などといった話を始めても混乱を増幅させるだけなので、それはやめるとして、ではどう考えればいいのか。
私の母は遠視が強いのですが、若かりし頃「空のもっともっと向こうを見たい、という衝動に駆られた」そうです。
ここにヒントがあるかと。
つまり、遠視眼の遠点は、実際には見ることのできない距離(場所)にあるという考え方です。
これを無理矢理に具体化すると、地面に立ってまっすぐ前を見ているとして「もっと遠く、もっと遠く」を追求していくと、地球を一周してしまうということ。

すなわち、実際には見えないけれど、限りなく自分の後頭部に近いところにある遠点を見ようとしているということです。
そう考えると、眼後4mの遠点のほうが、眼前10センチの遠点よりも自分の眼(顔面)に近くなります。
だから、眼後10センチよりも少ない「調節」で済むという話です。
多分に無理がありますが、「眼後」というのはそういう解釈をするのもアリではないかと思うわけです。
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