業界では、バゴリニ(バゴリーニ)レンズと呼ばれています。
透かしてみると、細かい線が無数に引かれているのがわかりますね。
使い道としては、日常視下での網膜異常対応のチェックというのが一般的かと思われます。
「網膜対応」については簡単に語れるものではありませんが、簡単に語ってみますと、
『視科学』 キクチ眼鏡専門学校より
上図のように、通常は両眼単一視を可能にするために右眼の黄斑部中心窩(fR)と左眼の黄斑部中心窩(fL)というのが対応の関係にありまして、左右眼の黄斑部中心窩には同一の像が投影されている理屈になります。
同様に、a1とa2、b1とb2というのも対応の関係にあるわけです。
ところが、斜視がある場合に、この対応関係がイレギュラーなパターンを呈することがあるのです。
極端にいえば、上図のfRとa2とが対応関係を結んでしまうような状態が「異常対応」と考えられます。
これ以上のコメントは、墓穴を掘る可能性があるので、やめておきますね。
まぁ、そういう難解な理屈は置いていおいて、どういう風に使うかといいますと、仮枠の右眼側には検者から見て線が右上がり(45度)になるように、左眼側には線が左上がり(135度)になるようにレンズをセットするのです。
これを装用して点光源を固視すると、
右眼には右上がりの光線
左眼には左上がりの光線が見える環境が整います。
この前提のもと、これを装用した人に、点光源と2本の線がどのような見えかたをしているかを答えてもらいます。
見えかたの例として図示したのが、こちら。
『Binocular anomalies』 Griffin & Grishamより
上下斜視があると、もっと複雑な見えかたになることもあります。
一々説明はしませんが、正常な人であれば上図Cの見えかたになります。
また、斜視になっていてもCの見えかたをするのであれば異常対応と考えるのが筋でしょうね。
線状の光線が見えるという意味では、マドックス杆を両眼に装用しても同じことです。
ただ、バゴリニはレンズが透明なので、周りの景色も見えていますから、より日常視に近い環境下での対応関係をチェックできるというのが、両眼にマドックス杆を装用するのと大きく違うところです。
また、検査時の室内は明るいほうが、周りの景色が見えやすいので、より日常視に近くなります。
暗室でやれば、光線は視認しやすくなるかもしれませんが、周りの景色が見えない(日常視から乖離する)ため、バゴリニ本来の目的には沿わないでしょう。
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