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キベベワールド

「メガネの一心堂」の店長が、タメになること・ならないことをつづります

21項目検査 #11 (リバイバル)

ブログを9年続けていると、古い記事が埋没してしまいます。
多少はタメになりそうな記事も書いているので、埋もれさせたままも、もったいないかなと思います。

7年前に投稿した21項目検査についての記事を、順次再アップしていくことにします。
(必要に応じて加筆修正します)

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今週の21項目検査は、#11です。
遠見での外寄せ(開散力)の検査です。

手順は、先週ご紹介した#9・#10と同様。

違うのは、ベースアウトプリズムを付加するのではなく、

1101191.jpg

ベースインプリズムを付加していくというところ。

1101261.jpg

なぜ、ペースインプリズムを付加すると外寄せするのかということについては、「なぜペースアウトプリズムを付加すると内寄せするのか」の逆の考え方になりますので、そちらの解説をご覧ください。それから、もう一点。

内寄せ検査では、視標がボケて見え始めたプリズム量を記録しましたが(#9)、遠見の外寄せ検査ではボケたプリズム量の記録はしません。

#11というのは、視標が2つにわかれて見えたときのプリズム量(分離点)と、再び1つに見えるようになったときのプリズム量(回復点)を記録することになります。

もし、視標がボケて見えることがあったとしたら、それは#7(#7a)の値が、マイナスレンズの過矯正であることを意味します。
なぜか?
それは、#9が測定できる理由をヒントに考えれば、導き出せるはずです。


私は、単に検査の手順を覚えるよりも、「なぜ内寄せ(外寄せ)するのか」「なぜボケる(ボケない)のか」といったことに疑問を持ち、きちんと理解することのほうが数倍大切だと考えます。

検査手順なんていうのは本を読めば載っていますし、情けないことに最近のシステム検眼機はご丁寧にも機械が検査手順を教えてくれます。
これ、個人的には、余分な機能だと感じています。

機械に導いてもらわなければできないレベルなら、得られたデータの意味するところも真に理解はできていないでしょう。
検査をしてデータを「得る」のと、検査をして得たデータを「読む」のとは、まったく別次元です。
それでも何も知らないお客様は「こんな検査をやってもらったのは初めてだ。最近の機械はすごいね」などといったコメントをされると思います。

もちろん「習うより慣れろ」で、まず実践から入り、それから理屈を理解していけばいいじゃないかという意見もあるでしょう。
それはそれでよいと思います。

そうではなく、単なるハッタリ、エキシビジョン的に検査をやってみるだけで終わってしまうのであれば、それで果たしてよいのだろうかと思うわけです。


まぁ、愚痴はおいといて。

#9・#10・#11を行なうことによって、遠見の融像力がわかります。
#8と併せて、遠見での水平方向における両眼視状態の把握が可能になるのです。


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当時、この記事に関連するご質問をいただき、それに対して回答をしましたので、併せて記載いたします。

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ご質問内容は、内寄せ検査を行なう際にベースアウトプリズムを付加することに関してでした。

(引用開始)

>ベースアウトプリズムを加えていくことで両眼は内寄せをさせられます

っていう場所なのですが、これはbase inではないのですか?
base outは内斜視や内斜位に処方するもので内寄せをさせにくくするのではないでしょうか?

(引用終わり)


質問者さんが、どの程度のバックグラウンドをお持ちかが分かりませんので、もしかしたら難解かもしれませんが、とりあえずいってみましょう。

まず、プリズムというのは光を曲げる性質があります。
参考記事

たとえば下図左のように、Aから出た光は通常は空気中を直進します。
しかし、途中にプリズムを置くと、光はプリズムの厚みのあるほう(基底方向)へ曲げられます。(下図右)

1101218.jpg

これが大前提です。


今、ある人が(斜位も斜視もないとしましょう)物体Aを両眼で固視しました。
このとき、物体Aは両眼の中心窩(f)の位置に結像します。
これが#9・#10の検査を開始するときの状態です。

1101213.jpg

今、両眼前にある量のペースアウトプリズムを付加しました。
物体Aは、プリズムの性質により基底方向に曲がり、各眼の中心窩よりも耳側の位置に結像します。

1101212.jpg


この人は、「Aを頑張って1つになるように見続けてください」という指示を出されていますが、1つに見続けるためには物体Aが中心窩の位置に結像するようにしないといけません。
(今の状態では、2つに分かれて見える、いわゆる複視になってしまいます)

そのため、両眼は内寄せをします。

1101214.jpg

そうすることで、物体Aを中心窩の位置に結像させることが可能になるのです。

1101215.jpg

甚だ簡単ではありますが、これがペースアウト付加により両眼が内寄せする理屈です。



さて、この理屈でいくと「内斜視の人にペースアウトを付加したら、もっと内斜視になってしまうではないか」と考えたくなるわけです。

これを説明すると、多分余計にこんがらがると思うので、無視してもらって構わないのですが、こんがらがってもよろしければ。。。。


まず、物体Aを左内斜視の人が両眼で固視しようとすると、こんな感じになります。

1101211.jpg

物体Aは左眼の中心窩から鼻側にずれた位置に結像します。
今のままでは左眼の中心窩には物体Aは結像しません。

図面上は、左眼だけを外に寄せれば、物体Aを中心窩の位置に持ってくることはできますが、右眼が物体Aを固視しつつ、左眼のみを外に寄せるということはできません。
(左眼で物体Aを固視しようと左眼が外寄せすれば、右眼は内寄せしてしまうのです)
通常はそういう神経支配になっています。

このとき、左眼前にずれた分に相当するベースアウトプリズムを当てれば、仮に左眼の視線は物体Aには向いていなくとも、物体Aは左眼の中心窩に結像します。
言いかえれば、この状態ではペースアウトプリズムを当てても、内寄せは生じません。

1101217.jpg

もしこの人が正常な感覚性融像機能を持っていれば、これにより両眼で物体Aを固視することは可能になります。
(あくまでも、理屈を説明するための例です。実際の内斜視は、このような理屈通りにはいかないことが多いです)

ですから、内斜視・内斜位の人へのベースアウトプリズム処方というのは「内寄せをさせにくくする」と考えるよりも、「無理な外寄せをしなくても済む=負担が少なくなる」ためのものだと考えたほうがよいかと思います。


これでご理解いただけたかどうかは、まったく自信がありませんが(別の疑問が湧いてくるであろうことは、わかっています)、少なくとも内寄せを誘発するメカニズムだけでも何となくつかんでいただければ嬉しく思います。

  1. 2018/03/17(土) 23:55:15|
  2. 視機能・視覚・検査など
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