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キベベワールド

「メガネの一心堂」の店長が、タメになること・ならないことをつづります

技術

「技術」というのは、なかなか他人にはわかってもらいにくいものではないかと思います。

幾ら「これがこうで、ああで」とどんなに優れた技術なのかの講釈を受けても、実際に自分がやってみないことにはピンとこないことも多いのではないでしょうか。

例えばゴルフ。
「止まっているボールを叩けばいいんだから、簡単じゃねぇか」とはたからは見えるかもしれませんが、実際にやってみるとプロゴルファーの技術がどれだけ高いのかがよくわかると思います。

あるいは、名工の鍛えた包丁と一般的な包丁とで刺身を切ってみるなど、何らかの比較をすることによって初めて両者の違いがわかるということもあるかもしれません。
(あまりにもど素人だと、違いはわからないかもしれませんが。。。)


眼鏡調製における技術というのも、一般のかたには、なかなか伝わりにくいものでしょう。

フレームやレンズをつくるにあたっても、本来はそれぞれものすごく技術を要します。
そして、そうした技術の結晶であるフレームやレンズを材料として、眼鏡技術者は「眼鏡」を仕上げます。

大雑把にいえば、眼鏡調製には、お客様のご要望を十二分にお伺いした上で、

1. 度数や視機能を測定する
2. 用途に適した、快適に使用できる度数を決定する
3. 「似合う」だけでなく、骨格や使用するレンズを考慮したフレーム選びのお手伝いをする
4. 目的・環境・似合うカラー・使用するフレームなどを考慮したレンズ選びのお手伝いをする
5. 美的・光学的・力学的な要素を考慮したフィッティングを行なう
6. 光学性能が十分に発揮でき、美しく掛けられるように、レンズをフレームに組み込む

などといった技術が要求されます。

無論、気持ちよくお買い物をいただくための接客技術というのも必要になります。


ほかにも細かな技術は要求されますが、実際に一般ユーザーが実感しやすい「眼鏡店の技術」といえば、フィッティングなのかもしれません。


何年か前ですが、当店に、ある出版社から電話がありました。

・ある雑誌の中で、メガネに関するページを組む
・その記事の中で使いたい画像が、このブログに掲載されていたので使わせてほしい

といった内容でした。

どんな記事になるのかもわかりませんので、当店の名前を出さないことを条件に承諾し、誤解を生むような説明記事を書かないように、注意事項もお知らせしました。

ちなみに、使われたのは、この画像です。

HM.jpg


しばらくして、その雑誌が発売されたので、目を通して見たところ、見開き1ページの記事で、

・流通体制の見直しによってメガネの価格は著しく下落をし、格安店が多数出現した
・高級店は価格の高さを「レンズの性能」や「技術」などなどで説明をしているが、格安店との価格差を埋めるだけの価値があるかというとそうではない
・そういう言い分は売り手の自己満足でしかないことを業界の有識者も認めている
・格安店でも品質・店員の質ともに十分に満足の得られるレベルである
・光学的な特性を求めるような特殊なケースを除き、メガネは格安店で買うのがおすすめだ

まぁ、そんな要旨でした。
我々眼鏡技術者としては、突っ込みどころや反論したいところもあるかもしれませんが、世間一般の認識がこういう状態だということを、謙虚に受け止めなければならないでしょう。


それはそれとして、そのページに書かれていた『高い店が主張する「技術の違い」はほとんど自己満足』という囲み記事には、「技術が重要な調整箇所」というチェック項目がまとめられておりました。
ところが、それが「調整」という言葉を使われていることからもわかるとおり、すべてフィッティングに関するものでした。

鼻あての調整は難易度A
前傾角の調整は難易度B
水平バランスの調整は難易度C

等々、何を根拠にしたのかわかりませんが、ご丁寧なランク付けもされています。

でも、実際のところ、フィッティングは画一的にランク付けできるようなものではありません。
それに、フィッティングはとても重要な技術ではありますが、そもそも眼鏡を仕上げるには前述したような多分野にわたる技術も必要です。
(もっとも、眼科で眼鏡処方箋を発行してもらった場合は前述の1・2は不要になるかもしれませんが)
しかし、それらに関しては全く触れられていませんでした。

「技術は自己満足」と切り捨てておきながら、最後には「装着時の違和感をどうしても直したいなら高級店へ」と何だか矛盾するようなコメントもあり、苦笑いするしかありません。


これが、一般のライターさんが自らの意見として書いたものならまだしも、協力者として眼鏡店出身で現在はメガネに関する情報発信をなさっているかたの名前が記載されていました。

業界出身者が眼鏡の技術について語るのなら、フィッティング以外についても言及すべきではないのかなと、そのかたの技術そのものに疑問を抱いてしまったものです。


メガネの調製にはさまざまな技術が必要であることを皆様に理解していただけるよう、そして「あなたの技術は素晴らしいね」と認めていただけるよう、多くの眼鏡技術者が日々努力を続けていることを心に留めておいていただければ嬉しいです。
  1. 2011/06/04(土) 23:15:02|
  2. メガネ・フレーム・レンズなど
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